こんにちは。ここでは通関士試験の出題範囲である外為法について学習します。外為法に基づいて制定されている輸出貿易管理令、輸入貿易管理令については毎年各1問出題される傾向があります。ややこしい内容ですが、出題形式は限られていますので、覚えてしまえば得点に結びつきます。
関税法や通関業法ではないですが、関連法令として覚えておく必要があります。通関士合格後の実務でも必要な知識なので、貿易関係のお仕事の方は覚えておいて損はないですよ。試験に出題されやすいワードは赤字にしてます。
外為法
外為法とは、「外国為替及び外国貿易法」のことです。外為法の中の外国貿易が出題範囲となります。関税法では財務大臣という言葉をよく聞きましたが、外為法は経済産業大臣がよく登場します。管轄は経済産業省だからです。目的は、①国際社会の平和及び安全の維持②国際収支の均衡及び通貨の安定③我が国経済の健全な発展です。ん?最近の円相場を見ていると機能しているの?って思いますが。。。
一部の物や地域に対してへの輸出の許可、輸出の承認、輸入の承認について関連する輸出(輸入)貿易管理令に定められています。ここで覚えておくことは、輸入は許可と承認にわかれていますが、輸出は許可のみで承認という制度がありません。
ちなみにここで言う許可とは、輸出入申告を経て得る税関長の許可とは別物です。
ここがポイント
・輸出は経済産業大臣の許可、承認
・輸入は経済産業大臣の承認
が必要だにゃ。
輸出貿易管理令
輸出の許可が必要な場合
輸出貿易管理令別表第一の1の1から16の項に掲げる貨物を輸出する場合には、経済産業大臣の輸出の許可が必要となります。なお、16項はキャッチオール規制と言い同表下欄の地域を仕向地として輸出する場合に経済産業大臣の許可が必要となります。
2つの要件が重なった場合は、輸出の許可が必要ということですね。では、その要件を見ていきましょう。
輸出貿易管理令別表第一の1の1から15の項 (経済産業省リンクはこちら)
まず下記表がリスト規制と言われる1項から15項です。細かい品目まで覚える必要はないですが、どういったものがあるかイメージで覚えましょう。武器や戦争関連がほとんどですね。
経済産業省ホームページ
輸出貿易管理令別表第一の1の16項 (経済産業省リンクはこちら)
次にキャッチオール規制と呼ばれるものです。これは上記1~15項でカバーしきれていないものをフォローするために制定されています。これが16項です。こちらは仕向地地域限定です。こちらは類によって決められています。対象となるのは第25類から第40類まで、第54類から第59類まで、第63類、第68類から第93類まで又は第95類です。覚えなくてもいいです。
大事なのは対象地域です。下記はホワイト国と呼ばれる比較的安全な国です。これらの国以外が、16項の対象仕向地となります。2019年に韓国がホワイト国から除外されたニュースは記憶にあるのではないでしょうか?↓
輸出令別表第3の地域
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
ここまでややこしい話でしたが、下記フロー図を見てもらえれば理解しやすいと思います。武器製造や戦争関連以外の普通の貨物を輸出する際に、経済産業大臣の許可が必要となる貨物は基本的にはほとんどありません。
経済産業省ホームページ
輸出の許可を必要としない特例
輸出貿易管理令別表1の1の項の貨物(放銃や爆発物)以外に下記特例が適応されます。逆に言うと1の1は必ず許可が必要です。
- 仮陸揚貨物
- 外国貿易船が自己の用に供する船用品(機用品)
- 国際機関が送付する貨物であって、条約等によって輸出に対する制限を免除されているもの
- 本邦の大使館等に送付する公用貨物
- 少額貨物(別表1の5から13まで又は15の項の中欄に掲げる貨物(上記リスト規制表赤枠貨物)であって、総価額が100万円(別表第3の3に掲げる貨物にあっては5万円)以下であり、別表第4に掲げる地域以外の地域を仕向地とする貨物。
ここでいう3の3の中身は何を書いているか解読が難しいので、試験的には無視していいと思います。3の3という数字だけ覚えていればOKかと思います。第4に掲げる地域とはイラン・イラク・北朝鮮といった国を指します。
ルールとしては簡単ですよね。
赤字個所が重要箇所ですのでさくっと覚えましょう。
許可が必要なものは戦争や武器に関連するものだったよね
輸出の承認が必要な場合
続いて輸出承認が必要な貨物についてです。輸出の許可と混同しないことが重要です。こちらも経済産業大臣の承認となります。対象貨物を見ていきましょう。
輸出貿易管理令別表第2に掲げる貨物
輸出貿易管理令別表第2中欄に掲げる貨物を同表下欄の地域を仕向地として輸出する場合。
表の掲載は割愛しますが、外国との約束事で決められているような感じですね。それと公害や地球環境など。え?こんなものが?というものが入っています。よく出るものは赤字にしています。
ダイヤモンド原石、血液製剤、核燃料物質・核原料物質、放射性廃棄物、放射性同位元素、麻薬、向精神薬原材料等、漁船、しいたけ種菌(原則輸出禁止)、うなぎの稚魚、冷凍のあさり、はまぐり及びいがい、オゾン層を破壊する物質、特定有害廃棄、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に規定する廃棄物、有害化学物質(ロッテルダム条約、ストックホルム条約関連)、水銀・水銀使用製品(水俣条約関係)、ワシントン条約対象貨物、希少野生動植物の個体・卵・器官、かすみ網、偽造・変造通貨等、反乱せん動書籍等、風俗を害する書籍等、国宝・重要文化財、仕向国における特許権等を侵害すべき貨物又は原産地を誤認させるべき貨物(現在の規制対象は、原産地を誤認させるべき貨物に限る)、関税法第69条の12第1項に規定する認定手続が執られた貨物(育成者権侵害貨物、その他の権利侵害貨物)、委託加工貿易
なお、冷凍のあさり、はまぐり及びいがいは、アメリカ合衆国向けのみの規制となります。
別表第二の二に掲げる貨物(別表第二の一、三六、三九から四一まで及び四三から四五までの項の中欄に掲げる貨物を除く。)の北朝鮮を仕向地とする輸出貨物
愛好品、贅沢品というイメージで覚えましょう。(下記表は試験的には覚える必要はありません。)
別表第二の二(第二条、第四条関係)
一 牛の肉(冷凍したものに限る。)
二 魚のフィレ(冷凍したものであつて、経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
三 キャビア及び魚卵から調製したキャビア代用物
四 アルコール飲料
五 製造たばこ及び製造たばこ代用品
六 香水類及びオーデコロン類
七 美容用、メーキャップ用又は皮膚の手入れ用の調製品(日焼止め用又は日焼け用の調製品を含み、医薬品を除く。)及びマニキュア用又はペディキュア用の調製品
八 トランク、スーツケース、携帯用化粧道具入れ、エグゼクティブケース、書類かばん、通学用かばんその他これらに類する容器(外面が革製、コンポジションレザー製又はパテントレザー製のものに限る。)
九 ハンドバッグ(外面が革製、コンポジションレザー製又はパテントレザー製のものに限る。)
十 財布その他のポケット又はハンドバッグに通常入れて携帯する製品(外面が革製、コンポジションレザー製又はパテントレザー製のものに限る。)
十一 衣類及び衣類附属品(革製又はコンポジションレザー製のものに限る。)
十二 毛皮製のオーバーコートその他の毛皮製品及び人造毛皮製品
十三 じゆうたんその他の紡織用繊維の床用敷物
十三の二 つづれ織物(経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
十三の三 磁器製の食卓用品(経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
十四 ガラス製品(鉛ガラス製のものであつて、経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
十五 天然又は養殖の真珠、貴石、半貴石、特定金属(銀、金、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム及びルテニウムをいう。以下同じ。)及び特定金属を張つた金属並びにこれらの製品
十六 携帯用のデジタル式自動データ処理機械(少なくとも中央処理装置、キーボード及びディスプレイから成るものに限る。)
十七 マイクロホン及びそのスタンド、拡声器、ヘッドホン及びイヤホン、マイクロホンと拡声器を組み合わせたもの、可聴周波増幅器並びに電気式音響増幅装置
十八 音声再生機、録音機及びビデオの記録用又は再生用の機器並びにこれらの部分品及び附属品
十九 録音その他これに類する記録用の媒体(写真用又は映画用のものを除き、録音その他これに類する記録をしたものを含む。)
二十 ビデオカメラレコーダー及びデジタルカメラ
二十一 ラジオ放送用受信機(無線電話又は無線電信を受信することができるものを含む。)
二十二 テレビジョン受像機器(カラーのものであつて、経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)並びにビデオモニター(カラーのものに限る。)及びビデオプロジェクター
二十三 乗用自動車及び雪上走行用に特に設計した車両(雪上走行用に特に設計した車両にあつては、経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
二十四 モーターサイクル(モペットを含む。)及び補助原動機付きの自転車
二十五 ヨットその他の娯楽用又はスポーツ用の船舶及びカヌー
二十六 写真機(一眼レフレックスのものに限る。)
二十七 映画用の撮影機及び映写機
二十八 投影機、写真引伸機及び写真縮小機(映画用のものを除く。)
二十九 映写用又は投影用のスクリーン
三十 腕時計、懐中時計その他の携帯用時計(ストップウォッチを含む。)
三十一 楽器並びにその部分品及び附属品
三十一の二 運動用具並びにその部分品及び附属品(経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)
三十二 万年筆
三十三 美術品、収集品及びこつとう
経済産業省ホームページ
委託加工貿易契約
委託する加工の内容が、革、毛皮、皮革製品(毛皮製品を含む。以下同じ)及びこれらの半製品の製造であって、かつ、輸出する原材料が皮革(原毛皮及び毛皮を含む)及び皮革製品の半製品であるもの。ただし総価額が100万円以下の貨物を輸出する場合は、輸出の承認は不要です。
輸出の承認を必要としない特例
- 仮陸揚貨物(ダイヤモンド、オゾン層を破壊する物資等、特定痛外廃棄物等は除く)
- 無償の救じゅつ品
- 総価額200万円以下の無償の商品見本又は宣伝用物品
- 船用品、機用品など
- 出国者、船舶または航空機の乗組員等が携帯品、職業用具、引越荷物、本人の私用に供すると認められる貨物を携帯し、または別送して輸出しようとするとき。
- 経済産業大臣が貨物の輸出を行うときは、この政令は適応されない
- などなど
それぞれ、特例の中の例外がありますが、、、
輸出の許可、承認の有効期間
輸出の許可、または承認の有効期間は原則として、許可、承認の日から6月とする。必要があると認めるときは延長することができる。
ちょっと難しかったですね。全部覚えようとせず、過去問などを参照し、要点だけを覚えましょう。ボリュームのわりに問題数が少ないので、時間をかけすぎないようにしましょう。
輸入貿易管理令
輸出は許可と承認がありましたが、輸入は輸入の承認のみです。輸出とよく似ていると思いきや、そうでもありません。
輸入の承認を必要とする場合
輸出と同様、承認するのは経済産業大臣です。忙しいですね。
輸入割当品目を輸入するとき
輸入割当品目として指定されている貨物は、にしん、いわし、食用の海草などの非自由化品目と、特定フロン等のモントリオール議定書に規定されている貨物です。
手続き的には、これらを輸入するときは、先に輸入割当を受けます。(あなたはこれだけの量を輸入してもいいですよ的な感じです)。割当を受けなければ輸入の承認を受けることはできません。
輸入割当証明書が交付されますが、有効期間は交付日から4月です。(6月ではありません。よく出ます)
割当を受けたものが輸入を希望しなくなった場合は、輸入割当証明書を遅滞なく経済産業大臣に返還しなければなりません。
2号承認品目
・中国、北朝鮮、台湾からの、さけ、ます並びにこれらの調整品
・火薬、原子炉、武器
・ワシントン条約(細かい規定あり)
・特定有害物質および廃棄物
・化学兵器関連
・化学物質の一部など
輸入の承認を必要としない特例
・輸入割当品目以外で、総価額が500万円以下の貨物、および無償の商品見本又は宣伝用物品
・輸入割当品目で総価額が18万円以下の無償の貨物
・無償の救じゅつ品
・船用品、機用品、再輸入品等
・本邦から出漁した船舶が外国の領海で採取した貨物で、その船舶又はこれに付随する船舶により輸入される貨物
・輸出した貨物が、航空機・船舶の事故により積戻しされるもの
・本邦に入国する巡回興行者が輸入する興行用具等
・入国者、船舶または航空機の乗組員等が携帯品、職業用具、引越荷物、本人の私用に供すると認められる貨物を携帯し、または別送して輸出しようとするとき。
・政府機関が経済産業大臣の定める貨物を輸入するときは、この政令は適応されない。
・逆委託加工貿易契約による貨物の輸出について、輸出の承認を受けて輸出した貨物を加工原料として加工された製品の輸入については、輸出の承認を受けた日から1年以内の輸入である場合は輸入の承認が一部不要となる。
税関長への権限の委任
下記の経済産業大臣の権限は税関長へ委任される。
・無償の貨物の輸入の承認
・6月と異なる輸入の承認の有効期限を定め、または1月以内においてその有効期限を延長する権利
・輸入の承認に条件を付する権限
以外に輸入のほうが簡単でしたね。あとは過去問を何回も解けば大丈夫だと思います。
総価額を問う問題、期間を問う問題、特例を問う問題がよく出題されます。意外と物品を問う問題は少ないんです。
まとめ
1日で終わらせるくらいの範囲ですね。ポイントだけ覚えましょう。
僕は独学で合格しました。下記参考書と過去問だけで合格できました。とてもわかりやすくお勧めです。