【特別な事情により課税価格を決定できない場合】2024年通関士試験 独学での勉強法

通関士

こんにちは。今日は課税価格の決定の原則で、課税価格を決定できないケースと、その場合の課税価格の決定方法を学習しましょう。このページでは通関士試験によく出るキーワードは赤字覚えるためのポイントは青字で示しています。

(課税価格の決定の原則の解説については、下記ページを参照ください。)

課税価格の決定の原則について

課税価格決定の原則を使えないケース

課税価格決定の原則を使用できないケースについて見ていきましょう。なぜ課税価格決定の原則を使用できないかを考えれば覚えやすいですよ。丸覚えしなくても、考えればわかるようになれば楽に回答できると思います。この章のテーマは「公平」です。

輸入取引に特別な事情がある場合とは、特別な事情があることによって課税価格が安くなっているなどがあった場合、課税価格決定の原則により輸入している人より関税が安くなりますよね。これでは公平ではありません。具体的には下記のような事情です。

買手による輸入貨物の処分又は使用につき制限があるケース

売手の指示や契約条件などにより制限がある場合で課税価格が安くなっている場合です。日本での販売は禁止で展示のみが認められている貨物があったとすれば、販売できる時と比べて価格は安く設定されますよね。

ただ、この制限(特別な事情といいます)に該当しないものが3つ定められています。テストによく出ますので覚えておきましょう。

  1. 販売が認められている地域の限定(売手から日本で販売できるのは沖縄のみなどの制限を受けている場合)
  2. 輸入貨物の処分又は使用が、法令または国若しくは地方公共団体により制限されるもの
  3. 制限はあるものの、取引価格に実質的な影響を与えていないと認められるもの。

ここがポイント!!!

この3つは制限は制限なんだけど、大きな影響のない制限だと思う。

だから例外として外されているんだね。

当該輸入貨物の取引価格が、当該輸入貨物の売手と買手との間で取引される当該輸入貨物以外の貨物の取引数量又は取引価格に依存して決定されるべき旨の条件その他当該輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が当該輸入貨物の輸入取引に付されていること。

読めましたか?上記表題は、関税定率法の条文そのままです。わかりませんよね?こんなイメージです。

買手
買手

この1着3000円のTシャツを1OO着発注します。

少し安くならないでちゅか?

売手
売手

こちらのセーターも買ってくれるなら、

Tシャツの値段を2000円にしてあげるぴょん。

売手
売手

あなたが販売している靴を1000円割り引いてくれるなら

Tシャツも2000円にしてあげるぴょん。

通常の値引きであれば、課税価格に反映させることができますが、このような値引きの場合は適正な価格とは言えませんよね。公平ではありません。課税価格を安くすると関税が安くなります。安く輸入したほうが日本での販売価格も安くできるので売れますよね。ほかの輸入者と比較して公平とは言えません。なので課税価格決定の原則を使うことはできません。

買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものとされているものの額が明らかでないこと。

額が明らかな場合はその分を加算することにより課税価格決定の原則を使用することができますが、額が不明な場合は当然その分安くなってるはずですよね?下記のようなケースです。

買手
買手

あなたの商品を輸入して、日本で売りたいと思います。

儲けがでたら、いくらかあなたに還元しますので、安く

売ってくださいでちゅ。

売手
売手

いいわよ。3000円だけど2000円で売ってあげるわ。

還元額は指定しないけど、期待してるわよ。

こういった場合、輸入申告の時点で還元額が明らかではないですよね。なので課税価格を2000円としてしまうと他の輸入者は同様の商品を3000円で購入しているとすれば公平ではないですね。なので課税価格決定の原則で決めることはできないのです。

売手と買手との間に特殊関係(一方の者と他方の者とがその行う事業に関し相互に事業の取締役その他の役員となつていることその他政令で定める一方の者と他方の者との間の特殊な関係をいう。以下この号及び第四条の三第一項において同じ。)がある場合において、当該特殊関係のあることが当該輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められること

これまた読解不能な文章ですね。つまり下記のようなケースです。

買手
買手

僕はあなたの会社の株式を5%以上持っているんだ。

だから半額で売ってくださいでちゅ。

売手
売手

うーん。仕方がないですね。株主あっての我が社なので

今回は半額で販売いたしますだぴょん。

他にも特殊関係には、相互に事業の役員となっている場合、共同経営者、使用者、5%以上の株式を持っている場合、支配関係、親族関係などがあります。

特殊関係にある場合でも、取引価格に影響を与えていないと認められる場合は例外で課税価格の決定の原則を使用できます。その輸入貨物が他の一般の同種類似の貨物の価格と近似してる場合などです。

その他

その他にも課税価格決定の原則で決定できないものがあります。課税価格決定の原則では輸入取引によるものと明記されています。なので、輸入取引によらない輸入貨物は原則から外れます。では、どういったものがあるのでしょうか?

輸入取引とは金銭の授受し貨物を購入し輸入すると思っていいでしょう。また正当な価格でない場合もそうですね。そこから外れるものは下記のようなものです。

  • 委託販売のために輸入される貨物
  • 無償で輸入される貨物
  • 賃貸借契約により輸入される貨物
  • 貸与貨物
  • 同一の法人の本支店間の取引により輸入される貨物  などなど。

課税価格決定の原則で決定できない貨物の課税価格の決定方法

では、課税価格決定の原則で決定できない貨物の課税価格はどのようにして算出し、申告するのでしょうか?大きく3つの方法があります。1つずつ見ていきましょう。

同種または類似の貨物に係る取引価格により課税価格を決定する

課税価格決定の原則を用いて課税価格とされた、今回輸入しようとする貨物と同種または類似の貨物に係る取引価格から算出することができます。(同種とは全く同じもの、類似とは同一機能を有し輸入貨物と商業的交換が可能なものを指します。)

ここで大事なルールがあります。

①今回輸入しようとする貨物と同じ生産国で生産されたものであること。

②今回輸入しようとする貨物の輸出の日または輸出の日の前後一か月以内の日に本邦へ輸出されたものであること。

③同種の貨物と類似の貨物の双方がある場合は同種の貨物を優先する。

④今回の輸入貨物と同じ生産者により生産されたものと、その生産者以外のものが生産したものがある場合は、輸入貨物と同じ生産者が生産したものの価格を優先しなければない。

⑤上記③④でもさらに競合し2個以上の取引価格がある場合は、それらのうち取引価格が最小のものが優先される。(計算問題でよく出ます。取引価格が最小のものを使いましょう。

国内販売価格に基づく課税価格の決定方法

課税価格決定の原則、そして同種または類似貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法でも決定できない場合は、輸入貨物、または輸入貨物と同種または類似の貨物の国内販売価格から逆算して課税価格を決定します。

ここにもルールがあります。

①輸入申告の時における性質及び形状により、輸入貨物の課税物件確定の時の属する日またはこれに隣接する期間内(その課税物件確定の時の属する日の前後1月以内)における国内販売価格であること。これらの販売価格がない場合は、その課税物件確定の時の属する日前後90日以内の最も早い日における国内販売価格であること。   (ややこしい文章ですが基本1か月で、ない場合は90日以内で探せということですね)

②特殊関係にない買手に対する国内販売価格であること

③国内の最初の取引段階のおける国内販売価格であること。

④二度以上の国内販売があってその単価が異なるときには、販売数量が最大である単価に基づいた国内販売価格であること。 (計算問題でよくでます。どっちの単価をしようするか間違えないでください。販売数量が最大の単価です

⑥複数ある場合の優先順位 

輸入貨物の国内販売価格>同種の貨物の国内販売価格>類似の貨物の構内販売価格

今回の輸入者が輸入した同種または類似の国内販売価格>他の輸入者が輸入した同種または類似の国内販売価格

具体的な計計算方法

国内販売価格から、輸入港到着後の費用を差し引いて、CIF価格に戻します。

国内販売価格ー(通常の手数料、利潤、一般経費+輸入港到着後の国内の運賃保険料+本邦において課された関税等+輸入港到着後の費用) =CIF価格(課税価格)となります。

製造原価に基づく課税価格の決定方法

最後に、製造原価に基づく課税価格の決定方法です。国内販売価格から輸入貨物の課税価格を計算することができない場合で、輸入貨物の製造原価を確認する場合に適応できます。(輸入者と輸入貨物の生産者との輸入取引に基づき本邦に貨物が到着する場合に限られます。代理人や仲介人が入っている場合は適応できません。)。また輸入者が希望する旨を税関長に申し出た場合は、国内販売価格より逆算して課税価格を決定する方法に先立って、この製造原価に基づく課税価格の決定方法を用いることができます。

具体的な計算方法

海外での製造原価+輸入貨物の生産国における輸入貨物と同類の貨物の本邦への輸出のための通常の利潤および一般経費+本邦までの運賃保険料等=CIF価格(課税価格)

まとめ

この分野は、結構重要なところです。選択問題のほか、計算問題での出題されることがあります。計算方法はわかっても、優先順位が分からず、誤った取引価格を引用してしまうと非常にもったいないです。優先順位はしっかり覚えておきましょう。

私は、独学で通関士に合格しました。下記参考書と過去問だけで合格できました。とても分かりやすい参考書なので是非活用してみてください。試験会場でも半数くらいの人がこの参考書を持っていた印象ですよ。



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